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お墓のお引越しとは?改葬・墓じまいの諸経費からポイントまで

お墓

厚生労働省が発表している「衛生行政報告例」によれば、日本における「改葬」の数が年々増加しているそうです。2008年には、72,483件であった改葬数は、2017年には104,493件へと増加しています。10年間で44.2%の増加率です。日本人のライフスタイルが変化するとともに、日本人の先祖との付き合い方が変化していることがうかがえます。そもそも「改葬」や「墓じまい」にはどのような意味があるのでしょうか。実際にお墓をお引越しする場合には、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。今回は、改葬や墓じまいに関するポイントや諸経費についてご紹介します。

出典:厚生労働省
厚生労働省が発表している統計データ「衛生行政報告例」の中の「埋葬及び火葬の死体・死胎数並びに改葬数,都道府県-指定都市-中核市(再掲)別」の「改葬」数値の推移。

改葬・墓じまいとは

改葬や墓じまいは、人生で何回も起こることではありませんが、両親や親族の死によって起こり得る、避けては通れない出来事です。

改葬とは、現在お墓の下に埋葬されている遺体や遺骨を別のお墓に移動させることを指します。お墓のお引越しと考えてもらえれば分かりやすいでしょう。それに対して墓じまいとは、閉眼供養といった儀式をしたあとに遺骨を取り出し、お墓を撤去してしまうことです。お墓の管理が難しいというような理由で、特に宗教的な理由がなければ、お墓をなくしてしまう人も最近は増えています。

改葬や墓じまいをするには、書類作成や役所への届け出など、さまざまな手続きが必要です。お骨は遺体の一部なので、勝手に移動させることができず、お墓を撤去するにも費用がかかります。

前掲の調査のとおり、日本では改葬をする人が年々増加しています。新たにお墓を購入しようと考えている人のうち、3分の1は改葬を予定しているそうです。

改葬する人が増えるにつれ、お墓の引越しに関わるトラブルに巻き込まれることも増えてきます。ある調査では、改葬時に「非常に大変だった」項目として「親族との調整」が最も多く回答されています。お墓は自分一代のものではなく、先祖代々、家族・親戚が関係するものであることから、事前に調整しなければならない関係者が多くいます。この調整が不十分だと、最悪、親族や親戚から訴えられるケースもあるため、注意が必要です。

「親族との調整」と同様、「お寺との調整」もトラブルの原因になり兼ねません。改葬や墓じまいは、お寺にとって檀家が減り、管理費や寄付が減少することを意味します。当然、お寺にとってはデメリットのため、最悪の場合、高額な離檀料を請求される場合もあります。高いものでは1,000万円を請求されたケースもありました。ちなみに、離檀料は法律で決められていることではないので、お寺との契約がなければ、払う必要はありませんが、先祖代々に渡ってお世話になった菩提寺ですので、円満に解決されることをお勧めします

また、両親が亡くなりお寺と疎遠になっている方は注意が必要です。お墓の年払いの管理手数料の未払い分を請求されることがあります。未払いが長年に渡っていますと高額になっている場合があります。

弊社のアンケート結果によれば、改葬に関わる費用を後継者に負担をさせることに対して、責任を感じる人は73.1%という結果が出ています。お墓の後継者となり得る自分の子供や孫の負担を軽くするためには、長期的な視点でお墓の運用方法を考えることがポイントと言えるでしょう。

改葬・墓じまいの流れ

実際に改葬や墓じまいをするようなことになった場合、どのようなプロセスを踏めばよいのでしょうか。

まず、お墓を管理しているお寺や霊園に届け出をする必要があります。遺骨を同一管理下にある永代供養墓地や別の場所に移す場合は、管理者に問い合わせてその手続きに従います。

別の霊園や新しいお墓に移す場合は、改葬許可書を発行してもらう必要があります。まず遺骨を移す新しいお墓から受入許可書または墓地使用許可書をもらいます。さらに改葬する古いお墓の管理者から埋蔵証明書をもらいます。この2つの書類とともに、現在のお墓のある自治体に改葬許可申請書を提出します。許可がおりれば、改葬許可書が発行されます。改葬許可申請書は、大抵の場合、各自治体のホームページからダウンロードできますので、事前に準備をしておきましょう。

次に閉眼供養を行います。閉眼供養はお墓から遺骨を取り出す際に行う宗教的な儀式で、故人の魂が宿っているお墓から、魂を抜き出すことです。お坊さんに対するお布施は1万円から5万円が相場といわれています。遺骨を取り出すために墓石を動かす必要があるため、石材店にもお願いする必要があります。

家がお寺の檀家の場合は、離檀の手続きをします。前述のとおり、離檀料は法律で決められていることではありませんが、慣習的に10万円から20万円程度をお布施します。

なお、お墓の土地はお寺や霊園などから借りているものですが、改葬や墓じまいをしたあとは、更地に戻して返還します。石材店に依頼して、関連物をすべて撤去します。移転先のお墓でも法要やお坊さんへのお布施が必要になります。
お布施や離檀料に明確な基準はありませんが、改葬や墓じまいをするには50万円から100万円程度の費用がかかることが見込まれます。費用としては、決して安いとは言えない金額なので、改葬や墓じまいは計画的に行いましょう。

お得で経済的なお墓いろいろ

郊外にあるお墓は利便性が悪い、都心部のお墓は価格が高いなど、自分の要望に合ったお墓がなかなか見つからない人もいるかもしれません。最近では、従来のようにお寺や霊園から区画を借りてお墓を建てるだけでなく、さまざまなタイプの埋葬方法があります。管理費がかからない、コストを抑えられるなど、従来のお墓にはないメリットがありますので、参考にしてみるのはいかがでしょうか。

散骨

散骨は、遺骨を粉砕して粉状にし、故人の好きな場所にまく方法です。そもそも「お墓に入りたくない」人にも適した埋葬方法です。生前、海が好きだった人は海、登山が好きだった人は山にまくことができます。桜の木が好きな人のなかには、樹木の根元に遺灰を埋める樹木葬を選ぶ人もいます。管理費や維持費はかからず、残された遺族の方は、遺灰が埋められた場所を訪れることで、故人を忍ぶことができます。

宇宙葬

宇宙葬は、遺灰を専用カプセルに入れ、ロケットで宇宙へ打ち上げる埋葬方法です。打ち上げられたロケットは、大気圏の摩擦熱で遺灰とともに消滅します。今まではロケットの打ち上げの費用が高額というデメリットがありましたが、コストダウンによって一般的に普及してきました。20万円台のサービスもあります。天体観測が好きな人、人生の最後に宇宙旅行がしたい人には好まれるのではないでしょうか。

永代供養墓

永代供養墓は、お墓を継ぐ人がいない場合において、霊園や寺院の管理者が遺骨を供養・管理を行っていく墓地のことです。一般的なお墓に比べてコストを抑えることができます。共同墓地なので墓石はは要りません。使用料も普通のお墓を購入するよりは、安くすませることができます。多くの場合、一度永代使用料を支払えば追加で費用がかかることはないようです。

合葬墓

合葬墓は遺骨を共同のお墓に埋葬します。合祀(ごうし)墓とも呼ばれます。一度埋葬するとほかの遺骨と混ざってしまうため、遺骨を返還してもらうことはできません。3万円代から申請できるお寺もあり、かなりコストを抑えることができます。最近では、宅配便で遺骨をお寺に送り、合葬をしてもらうサービスもあります。

納骨堂

納骨堂は、骨壺ごとに遺骨を一括で保管します。主に3種類あり、ロッカー式、仏壇式、自動搬送式があります。ロッカー式は、コインロッカーのようなタイプで骨壺を個別に保管し、2人用や3人用のものもあります。仏壇式は、骨壺を保管している場所に仏壇があり、位牌やお供え物を置くことができますが、ロッカー式よりコストはかかります。自動搬送式は、納骨堂と参拝所が別になっていて、参拝時に参拝所に遺骨が搬送されてくるタイプです。24時間対応の納骨堂もあり、利便性が高く現代的なお墓です。

自分に合ったお墓を見つける

改葬や墓じまいをする理由としては、後継者がいなくなった、お墓へのアクセスが悪く参拝しにくいということがあります。このような利用者のニーズに合わせて、「永代供養墓」「合葬墓」「納骨堂」など、意外とたくさんの埋葬方法があります。経済事情と相談しながら、自分に合った終活をしましょう。